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2013年3月21日

さくら鯛

いかにも魚らしい姿、なぜかほっとする暖かな色合い、その身は虹色に輝きほどよく甘い。姿、色、味。魚に求められる大切な三つの要素を備えている魚がマダイである。
 
海洋民族であった日本人は古来からマダイを珍重してきた。正月や慶事などの祝膳に出される丸ままの魚、いわゆる尾頭付きとは、本来、新鮮なマダイだけを指した言葉なのである。ほかにも青葉ガツオにさくら鯛とか五月陰暦の腐れダイ、夏の鯛はイヌも食わぬなど、数多くの言い伝えが残されているが、ちょうどこれからがさくら鯛のシーズンである。

さくら鯛という呼び名は、サクラが咲く季節に釣れるからという説もあるが、体がほんのりさくら色に染まるからともいわれている。
 
春は、マダイの乗っ込みのシーズン。乗っ込みとは、乗り込みという言葉が転化したもので、産卵のために群れになって浅場へやってくる魚の行動を表わした言葉である。
 
マダイは、このように昔から親しまれ、珍重されてきた魚だけに、そのイメージのよさにあやかって、○○鯛とか××鯛と呼び名がついた"あやかり鯛"が200種近くもいるそうだ。たとえばキンメダイとかアコウダイ、アマダイなどが、その好例だろう。たしかに体色はマダイのように赤いが、体型や習性、住む場所などまったく違う魚なのだ。
 
日本産のタイ科魚類は、7属13種と少ない。その中で釣りの対象にされているのは、マダイ亜科のマダイとチダイ、キダイ亜科のキダイ、ヘダイ亜科のクロダイ、キチヌ、ヘダイくらいだろう。 
 
"エビで鯛を釣る"という言葉があるように、昔からエビはマダイの好物だが、サイマキと呼ばれるクルマエビの小型を使って、ビシ道具で狙う昔ながらの釣りは、少しずつ姿を消しつつあるようだ。

いまや日本全国、津々浦々オキアミを使ったマダイ釣りが全盛である。完全フカセやテンビンズボ、ウキ流しに撒きこぼし釣りと、関東や関西で乗合船による新しい釣り方が続々と誕生し、それがいつの間にかすっかり定着した。ただ、昔ながらの漁法を守り続けている釣り場も、まだ残されている。和歌山の加太などがそうだ。高道具と呼ばれる全長10mを超える長い仕掛けにハリを5、6本つけ、細く、長く切ったピンクやオレンジ色のビニールをハリに刺して、ゆっくりリールを巻きながら釣るのだが、誘ってもダメ、アタリが出ても合わせてはダメ、ひたすら平常心でリールを巻き続けて、大きく竿が引き込まれ向こう合わせで掛かるまで待つ釣りなので、あわて者には向かない。乗っ込みの季節になるとこんな仕掛けに2匹も3匹も型のよいマダイが飛びついてくる。
 
ビニール擬餌の釣りは、当たってきたマダイをいかにして食い込ますかがキモである。このため食い込みがよくなるように極軟調子の竿を使ったり、3m以上の長い竿で釣る人が多い。魚の活性が高く、ほおって置いても食ってくるときは、竿の硬さも問題にならないが、当たっても竿で弾かれて魚が掛からないときだ。
 
こんなとき軟らかい竿を使うのも一つの手だが、それよりも重要なのがビニール擬餌の選択とリールを巻くスピードだ。当たってもなかなか食い込まないときは、リールを巻くスピードを普段の半分ぐらいまで落として試してみる。これを何度か繰り返しているうち、掛かるスピードが理解できるようになる。