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2013年2月28日

発光ダイオードにたどり着くまで

月も星の光りさえも差さない漆黒の海面を、まるで都会の喧噪の中で輝くネオンのように、小さくて鮮やかなルビー色の光りが漂う。わずかにうねる水面と波長を合わせて、静かに上下動を繰り返していたその光りが、ツンと押さえ込まれた後、音もなく水面下に引き込まれた。
 
それから数十秒後「クロダイだ~あ」という釣り人のうれしそうな声が、夜のしじまを破って聞こえてきた。
 
もちろんこのルビー色の光りは、電気ウキのものだ。夜でもウキ釣りが楽しめるという素晴らしい発明をしたのは、一体、誰なのだろうか…。

今回は電気ウキの歴史をひもときながら、どのような原理で光るのか、その仕組みになどを紹介してみよう。
 
電気ウキが発売されたのはいまから40数年前だから、比較的新しい釣り具だといえる。当時の松下電池が最初に発売したのが1964年。「サンライズ号」と呼ばれたこのウキは、単三電池を1本内蔵、豆球を光源にしていた。
 
この電気ウキは、重くて大きく、よく飛んだからタチウオやスズキの夜釣りには愛用されたが、チヌなどの繊細な釣りには感度が悪くて使う人は少なかった。それ以後、単五電池を内蔵したものや米粒大のミニ球の採用などで小型、軽量化がはかられたが、衝撃などによって起きる電球のフィラメントの断線だけは、防ぐ手だてがなかった。
 
こんな電気ウキが発売されてから数年後、チヌ釣りなどで一世を風靡したのがユアサ電池が発売した「銀ピカ」と呼ばれる電気ウキだ。このウキが人気を得たのは、小型で軽量、感度がよい点にあった。
 
このウキには「塩化銀電池」と呼ばれる、小さくてスリムな電池が採用されていた。どういう原理で電気が発生するのか、よく分からなかったが、この電池をウキに付け、海水につけておくと電気が起こるというまか不思議なものだった。
 
しかし、この「銀ピカ」も発光ダイオードを採用した感度のよい電気ウキが発売されるようになって、いつの間にか姿を消した。ただ、初期の発光ダイオードの電気ウキには、ひとつ問題があった。
 
そもそもダイオードというのは、電気を一方向にしか通さない半導体のことである。このダイオードが発光する原理は、ダイオード内のP層とN層という異なった金属などで作られたものの中に電流を流すと、電子同士の衝突が起き、そのエネルギーが光りとなって現れる。これが発光の原理だ。もともとは電気機器や計器類のパイロットランプとして開発されたのだが、これを電気ウキの光源として応用したわけだ。
 
ただ、ダイオードに電流を通して発光させるとき、2v以上の電圧が必要だったため、初期のウキはボタン型の水銀電池を2個使っていた。これは単三電池のウキに比べて確かにコンパクトになったが、水銀電池の直径が8㍉もありスリム化だけがどうしても実現できなかったのだ。しかし、1976年に現在も使われているピン型リチウム電池が誕生し、ようやくスリムで感度のよい電気ウキが完成したのである。