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2014年7月24日

食いしん坊のクロダイ

ホルモンが好きで、てっちりが好きで、うどんも好きやしラーメンも好物という雑食性の浪速っ子によく似た魚がクロダイだと思うのだが、異論のある人がいるだろうか。

かつて、といっても明治時代より遥か昔、クロダイはネズミダイという異名があったといわれる。
 
なぜ、魚であるクロダイにネズミの名が付いたかといえば、ネズミ並になんでも食べる好き嫌いの少ない魚だからという説が有力だ。
 
はっきりいって、クロダイは雑食性の魚である。
 
魚たちが好むエサばかりでなく、人様が好む食べ物も大好きだ。
 
それも動植物を問わない。
 
一般に海の中では、岸近くの生物相が沖合いに比べて遥かに豊富で、魚類のエサ場としては優れた環境にある。
 
だから、食いしん坊のクロダイが、一も二もなくこういう場所を選んで生活するようになったのは、懸命な選択といえるだろう。
 
ただ、エサが豊富な岸近くはの海は、外敵に出合う機会が多くなる。
 
それは魚であったり、ときには人間、つまり釣り人であったりする。
 
こういう環境の中で育ったクロダイは、自ずから警戒心が強なり、敏捷性に優れるという性質を身につけたわけだ。
 
もうひとつ見方を変えて推論すると、外敵に出合う確率が高い海を生活圏にしていると、いちいちエサを選り好みしていてはありつけない。
 
目の前にある食えるもの、あるいは食えそうなものを手当たり次第に口にしているうち、何でも食べるようになったと考えるのは、ちとうがち過ぎか?
 
この答は、チヌに聞いてみなければ分からないが…。
 
薄暮と薄明時もっとも活動が活発になるといわれるクロダイは、この時間帯にエサを飽食する。
 
近視だといわれるが、それほど目が悪いわけではない。
 
しかし、エサを探すのはもっぱら臭覚に頼ることが多いといわれる。
 
つまり、においの元を探すのが得意な魚だといえる。
 
臭覚が発達したクロダイは、においには敏感だ。
 
なかでも蛋白質が分解されたときに出る臭気には、特に敏感に反応するといわれる。
 
これを証明するのがクロダイ釣りに使われるさまざまなエサだ。
 
浮かせ釣りに使われる粒サナギのエサや紀州釣り、あるいはかかり釣りに使われる粗引きサナギなどのエサも、臭覚に訴える効果がある。
 
かつて、紀州の田辺地方で盛んだったといわれるミノジ貝を使ったクロダイ釣りでは、貝をつぶして腐らせてからエサにしたという。
 

もちろんクロダイはイガイやアケミ貝でもよく釣れるように、貝も好物のひとつだが、その好物の貝をわざわざ腐らせてから使うというのは、敏感なクロダイの臭覚に訴えかけるという効果を期待してのことだ。
 
同じようにタニシやカワニナなどもクロダイ釣りのエサとして使う地方があるが、これも新鮮なものより、腐りかけて強いにおいがし始めたものの方がよく釣れるという話を聞いた。
 
北陸地方には、イカゴロと呼ぶチヌ釣りのエサがある。
 
これはスルメイカの内臓を冷凍保存したもので、軟らかくてエサもちは悪いが、クロダイには大変なご馳走らしくて、イカゴロを使えばイチコロでクロダイが釣れるそうだ。
 
スルメイカといえば、大体が沖合いを回遊するタイプのイカである。
 
よって、クロダイの生活圏とダブル必然性はぜんぜんないのだが、それでもイカゴロを食うようになったのにはわけがある。
 
北陸地方はイカ漁が盛んだ。
 
そんなイカ漁の基地には昔からイカの加工場があった。
 
スルメに加工されたあと、残った内臓は海に捨てられる。
 
その捨てられた内臓をクロダイが食っている現場をきっと誰かが目撃したのだろう。
 
クロダイがイカゴロを食っている。
 
あれをうまくハリにさせたら間違いなくクロダイが釣れる。
 
そんな発想からイカゴロを冷凍し、硬くしてハリに刺すという釣り方が開発されたのだ。