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2012年4月12日

釣り番組のからくり

釣り番組のリポーター兼解説者として出演するようになって、20年以上が過ぎました。
 
今にして思えば、ずいぶんあちこちに取材に飛び、さまざまな釣りをリポートしてきましたが、その中で会心の釣りといえるものは、ほんの数えるほどしかありません。
 
年間100日以上、海の上で竿を出していてこれですから、月に一、二度の釣りで、本当によく釣れた、これぞ会心の釣りというものに出合える確率は、ほんの数%ではないでしょうか。
 
釣り番組に出演するようになって、釣り人や視聴者から一番よくいわれるのが
 
「この前テレビで見ましたよ、○○○をたくさん釣っておられましたね」
 
という感想です。
 
 
でも、当の本人はそんなに釣った記憶がなくて、いつのことだったかなと考えさせられることがよくあるのです。
 
あいまいな返事ばかり繰り返しているのも悪いので、さらに詳しいことを聞いてみると、つい先日、和歌山県の日ノ岬沖へイサキ釣りに出かけた日のことでした。
 
でも、あの日は潮は上りから下り潮に変わって水温が下がったために、イサキが食い渋ったときでした。1人で20匹も釣るのがやっだったのに、どうしてその人には、大漁に見えたんでしょうね。
 
 
そのわけは、こうです。
 
あの日は確か午前5時過ぎに出船しました。釣り手は3人、それぞれが所定の場所に陣取って竿を出しました。
 
魚探には赤くなるほどイサキの群れが写っているのに、なぜか食いません。
 
余りの食いの渋さに船長もしびれを切らせて、10回近くもポイントを変えたのです。
 
ポイントを変えて竿を出すと、2、3匹は釣れるのですが、すぐに食わなくなってしまうのです。
 
コマセを撒いて釣るイサギやアジはマキエがもらえると分かって船についてしまうと、なかなか群れが離れないものなのですが、この日は違いました。
 
いくらコマセをしても、すぐに船から離れてしまうのです。どの場所に行ってもこれの繰り返しで、ようやく昼過ぎに目処が付いて、港へと帰ってきました。
 
3人で釣り上げたイサキは、ざっと70匹余り。船長は「いつもなら、これで1人分の釣果だね」と笑っていました。
 
そんな釣果なのに、なぜテレビでは大漁に見えたのでしょうか。
 
それは時間のマジックなのです。朝5時過ぎから昼過ぎまで、7時間以上もかけて僕が釣り上げたイサキは20匹余り。
 
それをVTRに編集すると、1本の放映時間はわずか10分余りです。さらにVTRに編集するとき起承転結が必要ですから、出発風景やエサのアップ、誘いのテクニックなどいろんなシーンが当然必要になってきます。
 
となると実際に魚を釣っているシーンは、ほんの7、8分しかありません。イサキといえども1分に1匹釣れているよう編集すると、それは本当に入れ食い状態に見えてしまうのです。
 
ということは、1人で10匹ぐらい釣れて、それを3人で交互に写すようにすれば、文字通り入れ食いが演出できるわけです。
 
7時間余り掛けて釣ったものを10分の1程度に短縮して放送する、そこに時間のマジックがあることを視聴者は気付かないのです。
 
テレビで創られたものは、ドキュメンタリーを除いて、すべて創られたものだという認識が必要なわけですね。
 
次回は、コーヒー、それとも緑茶?サビキの話